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兄弟で全力コスプレごっこ?

last update Dernière mise à jour: 2025-04-02 10:42:42

◇◇◇

俺の予想通り、百谷三兄弟の登場で学校は大騒ぎになった。

凛々しく大人な数学教諭の芦太郎さん。

柔らか物腰の優男な養護教諭の宗三郎さん。

天然クール系イケメン王子っぷりな圭次郎。

学生や先生たちは分かるけれど、スマホで取られた画像が他校の生徒や保護者まで拡散されて、昼休みには学校の周りに人だかりができていた。

でも不思議なことに、翌日からは平穏な学校に戻っていて、普通に過ごすことができた。

まるで何もなかったかのような平穏。

百谷三兄弟はそれぞれの場所で、俺の高校にすんなりと馴染んだ。

芸能人やモデル以上のイケメン三人なのに。

この溶け込みっぷりは異常だった。誰もキャーキャー騒がなくなるなんて、どんな魔法を使ったんだ? と首を傾げるばかりだった。

まあ俺はすぐにこの日常を受け入れた。

圭次郎の座席は俺の隣で、全方位に塩対応の扱いづらい残念イケメンで面白くなかったけれど、数日したら慣れた。美人は三日で慣れるとはよく言ったもんだ。

◇◇◇

そして百谷三兄弟が隣に引っ越してきて、二週間ほど経った頃の夜。

「ん? なんだ?」

俺は自室で中間テストに向けて勉強している最中だった。

ふと窓の外が光った気がして目を向けてみると――ぼんやりとした青白い光が、隣の庭から零れていた。

「おっ、バーベキューでもしてるのか? でも、アイツが家族団らんでバーベキューってガラか? 似合わねぇ」

学校で同じクラスになった圭次郎を思い出し、俺は頬を引きつらせる。

アイツは高校に行きたくなかったのか、転向初日からムスッとしたまま誰とも馴れ合わず、未だに孤独を貫いている。

女の子相手でも愛想ゼロ。「用もないのに話しかけるな」と塩対応で、クラスの女子たちの心をへし折ってしまい、今では誰もが腫れ物扱いをして近づかない。

そんなヤツが、兄弟で仲良くバーベキュー?

ってか、今は夜の十時だ。こんな時間に住宅街でバーベキューは非常識だよな。じゃあ何やってんだ?

さすがに気になって、俺は棚に置いてあった小さな双眼鏡を手にすると、隣の庭を見てみる。

覗きは良くないよなあとは思ったが、気になってしょうがないし、変なことしてたら困るから、ちょっと覗くぐらい良いよな? と自分を納得させた。

木々の隙間を縫って隣の庭を覗いてみれば――百谷兄弟が三人揃っているのが見えた。

三人とも来ている服が、分厚い生地で細かい刺繍があちこちに入った衣装。仲でも圭次郎が豪華だ。クリーム色の生地自体がやけに輝いてやがる。

地面に浮かぶ光は円と模様を刻み、彼らが何かを話していると、髪がふわりと浮かんだりしている。

よく見れば髪の色がいつもと違う。

芦太郎先生は青。宗三郎先生は黄緑。圭次郎は白っぽい金色の髪。

ま、まさか、コスプレ?

兄弟三人して、異世界ファンタジー系作品の大ファンなのか?! だとしたら凝ってるだろ。動画でも撮ってSNSにでも上げる気か?

――あっ! 先生二人が圭次郎にひざまずいた?

うわあ、スゲー偉そうにふんぞり返ってるな圭次郎。もしかして王子様設定か? 板についてるなあ。うん、違和感なし。活き活きしてる。

光がちょっとずつ弱まってきた――ええ? 三人とも服やら髪の色やらが、映画の特殊映像みたいにちょっとずつ普段通りに戻っていってる。

どういう仕組みだ? 光の角度で見え方が違うのか? 特殊素材でも使ってるんだろうな。髪も専用のインクで染めてるのか?

あまりに不思議で夢のような光景を目の当たりにして、俺は双眼鏡を置いた後、しばらく呆然とする。

それから俺の口端がニンマリと引き上がった。

「面白ぇ! またやらないかな? しばらく見張っとかないと」

テスト勉強で疲れていたこともあって、不意打ちの不思議コスプレ会に気分が高揚しまくってしまう。ウキウキして勉強どころじゃない。俺は暗くなってしまった隣の庭を、双眼鏡で眺め続けた。

◇◇◇

――翌日、寝不足で俺の体はフラフラで、まぶたが勝手に上下でくっつこうとしてたまらなかった。こんな状態になってまで粘ったのに、あれからの成果はゼロ。俺の寝不足は無駄な努力に終わっていた。

「……行ってきます……」

重い足取りで家を出ると、ちょうど圭次郎も学校へ行こうとするところだった。

「あ……」

思わず目が合って、俺は相変わらず愛想ゼロの冷ややか男の顔を見る。

やっぱり近くで見てもきれいな王子様顔だ。よく王子様コスやってるから、そういう顔になっちまうのかなあ――なんて内心笑いそうになっていると、

「……何を見ているんだ。さっさと行って俺の視界から消えろ。目障りだ」

ハッキリとした塩対応をされて、俺は「はいはい……」と手を振りながら先を歩く。

圭次郎に背を向けながら、あんなクールなフリしてコスプレには熱いヤツなんだよなーと思い、俺はニヤけながら学校へと向かった。

兄弟ぐるみの異世界コスプレごっこ――あれを知ってしまったせいで、俺は圭次郎のぶしつけな態度に腹が立たなくなっていた。

だって、本当のお前は王子様だもんなー。

これから観察して、お前の生態を掴んでやる。そんでもって何かしてきたら、みんなにバラしてやろうっと。

こうして俺の百谷家――主に圭次郎――の観察ライフが始まった。

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